視覚障害者と革職人のコラボ



私は日本障害者ソフトの谷口(全盲)ですが、外出する時にはいつも白杖を片手に持って出かけています。
遠出をする時にはボディーバックやリュックなど持って出ますが、普段外出というか、ちょっとそこまでなんていう近場の外出では出来れば手ぶらで出たいものてす。
でも、いくら近場の外出でも家のキーや財布やスマホや身体障害者手帳や定期など最低限必要なものは持って出なければなりません。
それらを収納するのに小さなセカンドバックなどに入れて持ち歩いていれば両手が塞がる事になります。
つまずいたり何かに当たって倒れそうになった時に両手が塞がっていると支える手がなく非常に危険です。
またウエストポーチという手もありますが、それでは着る服装が制限されます。
スーツなどでは付けられないですから・・・・
また、セカンドバックなど使わずポケットに収納という手もありますが、上着を着ない季節だとポケットはズボンだけとなります。
そうなるとポケットは傍から見てパンパンでカッコ悪いです。
スマホをお尻のポケットに入れていれば、座った時にスマホに圧がかかり壊れる原因にもなりますし、用をたそうとトイレの個室でズボンを下げた時にスマホや財布を落としたり、それに気がつかずにいたり・・・・

この様な状況からカジュアルな服装でもスーツでも外出するのに最低限必要なものを収納出来て、両手が塞がらないものはないものかと探していました。
なかなか希望に合うものはありませんでしたし、ネットで類似のものはありましたが、どれも ちょっと違うなという感じでした。
いろいろと考えていて、昔懐かしい刑事もののヒーローがジャケットの脇から拳銃を抜き出すシーンで、その拳銃を収納している、あのショルダーホルスターを改造し、拳銃を収めるスペースにスマホや財布や小物など入れれるものがあればいいなと思っていました。
体に装着するので両手は塞がらず、いざという時に安心安全ですし、忘れるという事もありません。
そんなのないなら作るしかないなと思いましたが、自分にはアイデアはあっても、それを作る技術はありません。

そこで、ここ豊岡は日本一の鞄の産地、探せば きっと希望を叶えてくれる理想のホルスターを作ってくれる所があるのではないかと思い、ネットで調べ幾つものお店やメーカーに電話をし、こんなの作ってもらえないでしょうかと探しまくりました。
しかし、どこの誰とも分からない者からの申し出ですし、大量発注の話でもなく、たった一つ作るという様な話なのでなかなかまともに聞いてはもらえませんでした。

そんな中、あきらめかけていた時に ある職人さんとの出会がありました。
私はダンボールとガムテープを使って、見えないながら手探りで見本のホルスターを作り、それを その職人さんに見てもらい思いや希望を話しました。
そして、初対面にもかかわらず親身に私の訴えや希望を聞いて頂き、その思いに理解を頂き作って頂ける事になりました。

何回かサンプルを作り、その過程の打ち合わせの中で、視覚障害者としての使う立場と革製品を作る立場の二人が一緒に作りあげたホルスターは、健常者も障害者にとっても共に便利で使いやすいユニバーサルデザインの仕上がりとなりました。
そのホルスターを「TN19」と名付けました。

今では、私は毎日の外出時にはTN19を装着して出かけています。
TN19のおかげで片手に白杖を持っていても両手が塞がる事もなく、安心安全に歩行出来るようになりました。
スマホのショルダーホルスターなんて…と思われる方もいらっしゃると思いますが、胸元で着信音やバイブが鳴るのは、屋外などでの行動時に案外 大変重宝します。
両手の自由を確保したまま、使いたい時にサッと脇からスマホを取り出せ収納出来るのもありがたいです。

また、視覚障害者だけでなく車椅子使用者の方にも便利なのではないかと思いました。
外出に最低限必要なものをバックに入れて車椅子にひっかけていては落としたりひったくられたりするかも知れません。
膝の上に置いていたら落とすこともあるかも知れませんし、地面に落ちてしまえば拾う事も困難かも知れません。
「TN19」なら身体に装着するので落としたり忘れたりひったくられたりはされません。

この様に障害者に優しい製品は健常者にとっても優しく使いやすい便利なものですが、それを形にした物が「TN19」だと思います。
国内鞄の最大の産地 豊岡で、使う立場の障害者と作る立場の職人さんが一緒になって作った、このユニバーサルデザインの「TN19」を、健常者や障害者関係なく もっと多くの人に使ってもらえばいいなと思っています。

ちなみに、このTN19の「豊岡鞄装」のHPも作成しました。
そちらには装着写真ものせています。
URLは「https://tn19.masa-mune.jp/」です。

実際に毎日自分が使ってみて、こりゃ便利がいいと実感し、これなら他の視覚障害者の方々や一般の人にも便利なのではないかと思いましたし、職人さんも これなら一般に公開しても全然いいと太鼓判を押してくれました。
で、元々は販売目的ではなく自分が使うために作ってもらったのですが、今回日本障害者ソフトとしても取り扱う事になりました。
ご注文の流れについてや、出荷時期や製品の詳細については「豊岡鞄装」のホームページを参照下さい。
また、日本障害者ソフトでもOKです。






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